2020.08.24コラム
コラム3:家主さんにせめて知っておいて欲しい民法改正③
2020年4月1日から新たに改正施行された民法についてPart③をご紹介致します。
【民法第621条:賃借人の原状回復義務】
「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く)がある場合において、賃借物が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰すことができない事由によるものであるときは、この限りではない。」
これまでの民法では、原状回復についての明文化がありませんでした。
したがって国土交通省の「原状回復ガイドライン」や判例が指針とされてきました。今回の民法改正でそれらが新規定として明文化されることになりました。
☆ポイント
◎通常の使用で劣化したもの、例えば壁クロスの日焼けや畳の表替えなどは原状に戻す義務が賃借人にはないということが明確になりました。
◎民法で明文化されたことで、通常使用による損耗と経年劣化は、賃借人へ原状回復請求はできません。
◎賃借人が生じた損耗なのか、請求してはならない通常損耗なのか、はっきりと判別させる必要があります。
◎賃貸借契約の特約にて賃借人の原状回復義務範囲を拡大(借地借家法・消費者契約法に違反しない程度)することは可能です。但し、賃借人が負担することとなる損耗の範囲を具体的にしておく必要があります。
※これまでは…賃貸人と賃借人との間で原状回復範囲で揉めるケースが多かったです。今回の民法改正で原状回復義務が明文化されたことで紛争減を期待したいところですが、そう簡単にはいかないと思います。賃貸人から賃借人への原状回復請求に、賃借人からそこまで支払う必要のないのでは…といった間違った解釈での権利主張が増えると予想いたします。また、壁の傷ひとつとっても負担区分の食い違いが起きやすく、原状回復請求の業務は非常に難しい。負担区分の立証は、不動産会社従業員の最も難しい仕事のひとつでもあります。
☆ライフコーポレーションにて対応方法
◎原状回復範囲の特約を賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記する。
◎入居前チェック(チェック表記入・写真撮影)をしっかり行い証拠資料としておく。
◎専門スタッフや専門業者による退去後チェック(賃貸人負担なのか賃借人負担なのか公正明大に判定)の実施。
◎請求に納得がいかないという賃借人へは、宅建協会の提供する資料「退去時の原状回復における補修負担割合解説書」を参考に説明する。
◎請求金額が大きくて、すぐに支払いが難しい賃借人へは分割支払いを承諾する。
◎原状回復の工事業者さんへ、工事金額の値引き交渉をお願いする場合もある。その代わり別の仕事を作ってあげる。
◎家主様(大家さん)へ相談。経費計上による節税提案。次回入居への家賃値上げ提案。スモールリフォームで、お部屋の価値向上提案。などなど…
◎負担が明確にできない場合やイレギュラーが生じた場合、ライフコーポレーションにて負担できるよう引当金を設けておく。
原状回復業務でしっかりと負担区分を立証、万全な説明を施したとしても、賃貸人・賃借人いずれかがご納得いただけないケースは多々あります。請求金額に対するその人の持つ感情というものもありますので、説明者の人間力も求められてきます。
弊社では家主様の物件(財産)をしっかりとお守りする為、専門スタッフの育成とその業務品質向上、賃借人とのコミュニケーション良化に努めております。
今回は「家主さんにせめて知っておいて欲しい民法改正」Part③をご紹介いたしました。民法改正を機に弊社の業務品質もかなり改良できました。現状に甘んじることなく万人が納得いくような管理業務の改良を継続してしまいります。
株式会社ライフコーポレーションでは、業務のデジタル化を進めながら、コロナ禍の最中でも工夫した業務形態を進め、賃貸マンションの入居率向上に努めてまいります。また、知識の向上、技術の向上、人間力向上など、人材育成も欠かさず進め、社会・地域・お客様にお役立てできるよう邁進して参ります。これからもどうぞよろしくお願いいたします。