2021.02.11Q&A
1:改正民法についてのQ&A PartⅠ
民法の一部を改正する法律が2017年5月26日に成立し、約120年ぶりに債権法が改正され、昨年の2020年4月1日から施行されました。
今回の改正民法による賃貸管理業務への影響はかなり大きいです。
今後もますます、改正民法の内容を深く理解することが必要になってまいります。
そこで今回のコラムでは、「改正民法について」弊社ライフコーポレーションの考えも含めた上でQ&A方式にてご紹介してまいります。
【質問①】
賃借人が家賃を滞納したので連帯保証人に対して支払いを依頼したところ、賃貸借契約書に極度額額が定められていないので、払うつもりはないと言われました。この場合、請求できるのでしょうか?
【回答】
2020年4月1日以降に個人(連帯保証人)と賃貸借に関する保証契約を締結した場合、極度額を定めていないと連帯保証人に請求できません。
2020年3月31日以前の契約締結分の場合は、改正施工前ですので、連帯保証人に請求できます。
【質問②】
極度額と言っても、何を根拠に算定して良いのかがわかりません。目安はあるのでしょうか?
【回答】
明確な基準はございませんが、①滞納家賃、②原状回復費用、③自殺があった場合の賃料減額、などを考慮する必要があります。
弊社では総賃料(家賃・共益費・駐車料)の24ヶ月分を極度額として設定しております。
家賃債務保証会社の保証限度額の最大が24ヶ月分です。
(家賃債務保証会社によって、保証限度額は様々です。その中でも保証限度額24ヶ月分は最大値でございます。)
それ以下に極度額を設定すると、家賃債務保証会社からの弁済が極度額までになってしまいます。
最大保証額を弁済可能にする為、極度額を24ヶ月分と設定いたしました。
【質問③】
極度額を10億円とするなど、極度額はいくらに設定しても良いのでしょうか?
【回答】
設定するのは自由です。
しかし、あまり高額な場合、公序良俗に反するとして極度額の定めが無効になり、その結果、極度額の定めがないものとして、保証契約そのものが無効になる恐れがあります。
【質問④】
20204月1日より前に締結された賃貸借契約を更新する場合は、改正前の民法が適用されるのでしょうか?
【回答】
賃借人に対する賃貸借契約の更新のみであれば、連帯保証人には改正前民法が適用されます。
もし、連帯保証人に対して保証契約を更新契約(保証契約書への署名・押印)をするのであれば、新法に基づき、極度額を定めて更新する必要があります。
※極度額を定めなかった場合は無保証になってしまいます。
【質問⑤】
2020年4月1日以前に極度額を定めずに締結していた保証契約を更新する際、2回目、3回目、それ以降も連帯保証人へ確認は必要でしょうか?
【回答】
確認の必要はございません。
賃貸借契約のみの合意更新であれば、連帯保証人との保証契約は改正前民法の内容で継続されます。
【質問⑥】
契約期間2年間、極度額50万円の連帯保証において、賃借人が毎月のように賃料を滞納し、1年で連帯保証人が滞納賃料50万円分を代位弁済しました。
以後、債務が発生した場合、連帯保証人に請求できますか?
【回答】
連帯保証人が代位弁済した場合、極度額はその分減少いたします。
極度額50万円の連帯保証人が50万円分を代位弁済すれば、以後、その連帯保証人に対して請求をすることはできません。
【質問⑦】
個人の保証人との間で、極度額の制限が無く、一切の債務を保証する旨の特約を結ぶことは可能でしょうか?
【回答】
そのような特約は無効になります。
極度額の記載がないので、無保証状態となります。
【質問⑧】
2020年4月1日以降に極度額を定めて締結した保証契約を2年後に合意更新する際、設定した極度額を変更(極度額アップ)することは可能でしょうか?
【回答】
更新時の極度額変更については、当事者間の合意で更新毎に変更することは可能です。
しかし、実務上では、極度額の変更(極度額アップ)を連帯保証人に合意納得させるのは難しいでしょう。
これまでの保証契約を継続(極度額を変更しない)してもらうことが多いと考えられます。
【質問⑨】
更新までの契約期間中に滞納賃料を連帯保証人が支払い、当初定めていた保証の極度額より保証できる額が減少している(極度額が減った)場合、保証契約の更新合意書を交わし、合意更新した後は書面記載の極度額まで戻すことはできるのでしょうか?
【回答】
更新時に極度額戻すことについては、当事者間の合意で更新毎に変更することは可能です。
ただし連帯保証人に対してその理由を説明する必要がございます。
実務上では、極度額を戻すことを連帯保証人へ合意納得させるのは難しいでしょう。
更新契約書へ「現在、極度額が○○○円まで減少しているが、更新後は極度額を○○○円まで戻す。」という記載が必要になります。
【質問⑩】
賃借人が自殺した場合、お部屋の原状回復等がありますが、連帯保証人に対してどのような費用が請求可能でしょうか?
【回答】
賃借人が亡くなると、連帯保証人の負担する額が決定します。これを極度額の元本の確定といいます。
死亡時までに生じた滞納賃料等は保証の対象となります。
また、賃借人が自殺した場合、自殺物件として賃貸が困難となった損害についての賠償責任は賃借人の死亡時に発生した債務といえるので、保証の対象となります。
賃借人の死亡時までに生じている毀損部分についての原状回復義務も保証の対象になります。
【質問⑪】
賃借人が自然死した場合、連帯保証人に対して損害賠償請求等は可能でしょうか?
【回答】
賃借人が自然死した場合には、そもそも賃借人には契約違反がなく、損害賠償債務が発生しないため、発見が遅くなり腐敗が生じたとしても、その死亡に伴う損害について連帯保証人は責任を負わないものと解されます。
自然死は当然に起こりうると予想されるものであり、賃貸人の賃貸経営のリスクとして認識すべきものである。
ただし、賃借人の同居人や相続人その他の関係者が、賃借人の死亡を認識しながら、これを放置したことにより腐敗が生じたような場合は、同居人等に対して損害賠償をすることができる場合もございます。
【質問⑫】
連帯保証人が亡くなった場合、連帯保証人の相続人に保証債務は引き継がれますでしょうか?
【回答】
連帯保証人が亡くなった場合、保証債務の対象が「連帯保証人の死亡時に存在する賃借人の債務」に確定するため、連帯保証人の相続人は、その保証人が亡くなるまでに発生した賃借人の債務については保証債務を負いますが、それ以降に発生する賃借人の債務については保証債務を免れます。
また、連帯保証人が死亡すると保証人不在での賃貸借契約が存続することになります。
ですので、新たな連帯保証人を擁立することが必要になります。
今回は「改正民法についてのQ&A PartⅠ」についてのご紹介でした。
弊社は、弁護士・税理士・司法書士等、専門アドバイザーとも提携(顧問契約)しております。
弊社管理物件の家主様は、弊社顧問弁護士への(初回)相談は無料ですので、ぜひ一度弊社までお気軽にお声掛けくださいませ。
株式会社ライフコーポレーションでは、業務のデジタル化を進めながら、コロナ禍の最中でも工夫した業務形態を進め、賃貸マンションの入居率向上に努めてまいります。
また、知識の向上、技術の向上、人間力向上など、人材育成も欠かさず進め、社会・地域・お客様にお役立てできるよう邁進して参ります。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
※今回のコラム記事は、日管協が出版している「賃貸住宅クレーム・トラブルQ&A(vol.2)」から引用いたしました。わかりやすく表現するため、一部文章の書き換えも行っております。